神経科学における統計学
神経科学のように厳密性が低く,複雑かつ抽象的な対象を扱う現代的な学問にとっては統計学はもはや必須と言えます.実験デザインからデータの解析,解釈,あらゆるステップが統計に支えられています.神経科学の中にも基礎科学から応用科学まで広い幅が存在していますが,どのレイヤーの人間も統計から一切離れた議論というのはなかなかしにくいでしょう.最近では論文の査読段階でも最も専門が離れていてもつっこみやすく,かつ穴が多いのも統計です.
このような事情もあり,統計をしっかりと学んでおくことは神経科学の初学者にとって神経細胞を知ることくらい重要です.実験データを集めきってから,交絡要因を考慮しきれていなかったことに気付き,サンプルサイズの決定が甘かったことに気付き,論文を投稿してから検定方法に誤りがあったことに気付くくらいなら,最初から学んで適切な計画の上で研究をスタートした方が遥かに効率的です.
がんばっていきましょう.
主なおすすめ文献
- 竹村 彰通, 現代数理統計学 (☆☆☆), 2020
- 東京大学教養学部統計学教室, 統計学入門 (基礎統計学Ⅰ), 1991
- 東京大学教養学部統計学教室, 自然科学の統計学 (基礎統計学), 1992
- 大塚 淳, 統計学を哲学する, 2020