研究デザインとは
スタンフォード監獄実験やミルグラム服従実験が否定され,マシュマロテストなども強い疑いが向けられ,2015 年には Open Science Collaboration によって心理学の主要誌の論文の再現性はたったの 36 % しかないことが指摘される1など,惨憺たる状況をようやく自己認知,自浄し始めたこの分野において,これからを生きていく我々世代は大きな苦しみを背負っています.
- 上の世代が論文を稼いできた方法 (double dipping, p-hacking, harking…) が使えなくなってきた
- 上の世代は↑を使ってきたので,これらを使わない方法を知らず指導できない
- ひどい場合は未だに現実を受け入れず,不正を推奨 (使嗾) してくる場合もある
- が,こうした事情を理由に適切な研究をしておかないと,まともな Reviewer や博論審査員にあたると指摘される
- ともすれば今後,就職にも響くのかもしれない (“まとも” じゃない論文は出版されない or マイナス評価という恐ろしい世界線)
上司は指導できない.ともすれば正常化を邪魔してくる可能性もある.そんな状況で我々過渡期世代が出来ることは当然,自分で学び体得し上司を説得して実践し,次世代に引き継ぐことしかありません.
適切な実験デザインとは何か,いやその前に適切な研究デザイン,いやそもそも研究とは何か…こうした思索に耽る時間を今のうちに確保しておくことは,決して無駄にはならないはずです.本チャプターはその性質上,統計と大いに絡めた上で進めていきます.適宜参照することを推奨します.
主なおすすめ文献
- Stuart Richie, Science Fictions あなたが知らない科学の真実, 2024
- Graeme D.Ruxton & Nick Colegrave, Experimental Design for the Life Sciences, 2019
- 大塚 淳, 統計学を哲学する, 2020