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アカデミアを目指す人のための学生生活 Tips

アカデミアで大規模ラボに入った人とそうでない人にはあらゆる面で格差があります.もちろん,どちらの方が能力が上ということはないですが,ただ現実問題として環境の差=アクセスできる情報の差はかなりのものです.情報にあまりアクセスできない人でも大学院生活を有意義にできるように,筆者の気付いた Tips を置きます.

対象はタイトルの通り,修士・博士を取得しアカデミアに残りたい人です.企業に就職する人はこのページに書いてあることなんてして遊んでいないで,就活をすべきでしょう.

スケジュールについて

まず,当たり前のことからです.日本で Ph.D. を取得するには修士 2 年・博士 3 年で計 5 年を大学院生として過ごすことになります.この期間の過ごし方を考えるには,大きなイベントのタイミングを把握しておくことが重要です.一般的には下記などでしょう.

  • 学振 DC1 の申請
  • (DC1 不採択の場合) DC2 の申請
  • 修士論文の提出
  • PD その他のポスドク向け助成金申請
  • 博士論文の提出
  • ポスドク等への採用

学振 DC1・DC2 の申請

学振とは,日本学術振興会特別研究員のことです.上がいない & 外の所属に友達がいない人だとこれすら知らなかったりして非常に驚くのですが,アカデミアに残る日本の大学院生はおよそ皆が出すものと思います.年に 1 回,計 3 回の申請チャンスがあり,これに採択されると残りの在学期間は年間 240 万円 (2025 年) の給与がもらえます.また研究費も年間 100 万円程度もらえるので,ちょっとした出張くらいなら出せるようになります.奨学金などなしでご飯を食べることが可能になります.

学振は毎年 5 月頃に申請し,結果の通知が 9-10 月,採用の場合には翌年の 4 月から給与が払われます.DC1 は修士 2 年の 5 月に申請し,ダメだった場合は博士 1, 博士 2 年まで同じ条件の DC2 に申請することが出来ます.箔がつくという意味でも,トータルでもらえるお金の意味でも,DC1 に通るのがベストです.

学振の申請では,独創的かつ画期的,インパクトのある研究アイデア,具体的かつ実現可能な研究計画,これらを伝える論理的思考・作文能力,研究者としての将来性,研究実績が評価されます.つまり,修士 2 年の春にはこれらの能力で同世代から抜きんでておく必要があるということです.実際には,大規模ラボだったり教育熱心な上司のラボだったりすると,いわゆる「学振必勝法」や「秘伝のタレ」的な申請書の書き方ノウハウがあるので学生本人に上記の能力が無くても大幅なバフを受けられます.逆にそうではない環境の学生は,自己流でこの壁を突破する必要があります.

独創的かつ画期的,インパクトのある研究アイデア

これは主に知識量と洞察力,センスですね.以上と言えば以上ですが,気を付けられることはいくつかあります.学振に限らず,あらゆる申請書は審査員と呼ばれる人間がいてその人達が採点します.つまり採択されるのは,「真に独創的かつインパクトのある最強研究」ではなく「審査員が独創的かつ画期的,インパクトがあると思う研究」であるということを深く深く考えることです.審査員は大学の教員などがボランティアでやるのですが,学振に資料が集まるのが 6 月頃であり結果発表が 9 月であることから,おそらく審査は 7, 8 月頃に行われています.自分は以上の情報から,審査員を下記のように設定して書いています.

  • 学部生の前期が終了するので期末試験やレポート課題の作成と評価が忙しい
  • その後の成績評価も忙しい
  • 秋に卒業する学部・修士・博士学生の論文指導で忙しい
  • 自分の研究費申請書の作成,審査が進んだ予算の面接対策で忙しい
  • 近いうちに締め切り or 評価タイミングの獲得済予算があるので,ぼちぼちそれようの実験も本腰を入れる必要がある
  • そんな折,学振から DC の申請書の評価をはやくやるように催促のメールが来た ((・д・)チッ…~なら金よこせよ~).
  • 採択率は 15 % 前後,ということは 8 割にはさっさと “没” の評価を下してさっさと終わらせたい
  • 学振によって同じ区分にされてはいるけど,正直ほとんどの研究は専門外なのでよく分からない
  • 分からないので別に興味もない,なんか「っぽい」申請書だけ通せばいいや

といったところでしょうか.この審査員であれば,申請書の 1 枚 1 枚を熟読し,書かれている内容を理解した上で適正な審査をしてくれるなどとはとても思えません.明らかに斜め読みし,どれだけ減点できそうかをさらっと見て行けそうならさっさと “没” ボックスへ投げます.点数なんて後でてきとうに 2 点とかつければ良いですので (どうせ落とすから).

ですので結局のところ,採択されるためには加点されるのではなく減点されないことを意識するべきです.真に独創的かつ画期的,インパクトがあるかではなく,審査員にそう思わせる,あるいは斜め読みしかしてない審査員達に「すくなくともそういったアピールは出来てる」と思わせるゲームなのです.つまり学振申請書とは研究計画ではなく,デザインセンスのバトルです.

具体的かつ実現可能な研究計画

さて,専門外の審査員だと一番よく分からなくなりがちなのがこの項目です.よく分からない専門用語を並び立てて,

「本研究では○○によって計測した○○を○○解析にかけ,○○を抽出する.○○が○○な場合,さらに○○をし,続いて○○,○○に進む.計測器は○○,計算アルゴリズムは○○を採用する」

とか言われても何も分かりません.正直,それっぽい漢字を並べたら架空の手法があっても気付かないでしょう.たまに上記のような文を書くことを「具体的」だと指導してくる人もいますが,個人的には賛同できません.こうした書き方は自身の専門知識が深いというアピールのつもりなのでしょうが,ここもやはり,「真に具体的ではなく審査員にとって具体的」であるべきです.審査員にとっては,これらの○○が分かりませんので「なんか具体的に書こうとしてるんだろうけど,何言ってるのかはさっぱり分からんのだよね.僕が分からないんだし,多分この子の書き方とか計画が悪いんだろ,うん,減点っと」となるわけです.

ですからたとえば,「本項目では,本研究の主目的であったAとBの関係を 20 の試料を使って調べる.既に 5 試料は取得出来ているので,1 年以内に完了する.(詳しい人向けに)ちなみに手法としては,計測は○○,解析は○○を採用している」のような流れが好ましいと思います.これなら審査員も評価できる気になれるでしょう.しかも2文目以降 (パラグラフライティング的には無視しても良い,サポート文のところ) で専門用語を並び立てるので,ただ専門知識がないのではなく,専門外への配慮なのだと伝わります.

論理的思考力,文章力

研究者としての将来性・実績

自分も教員,先輩,同輩,後輩と多くの申請書を見てきましたが,

おすすめ活動

  • 若手の会への入会とイベント参加
  • 学会等のワークショップ等,若手向けイベントへの参加
  • 学会や研究会のスタッフ,座長,広報業務などへの積極的協力
  • とにかく飲み会に顔を出す
  • 随所で「自分はアカデミアに行きたい,行って○○の研究をしたい」と刷り込んでおく
  • 研究系のインターンやアルバイト
  • 共同研究